「かっこいい」ということ──岡田有希子の死をめぐって

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    72
  • 音質

    マガジンハウス主催
    「鳩よ!」セミナーでの講演。
    講演に先立つ4月8日には、
    アイドル歌手・岡田有希子が
    自殺する事件があった。
    音源はライン録音。

  • 講演日時:1986年5月4日
    主催:マガジンハウス
    場所:新宿・紀伊國屋ホール
    収載書誌:弓立社『サクリファイス』(白倉由美著:1989年)




「かっこいい」という言葉が
普遍性を持つようになったのは、
たかだか10年ぐらいのことだろうと思います。
なぜ「かっこいいか悪いか」という評価の基準が
発生したかというと、
僕の考えでは「離脱」ということが
現代の大きな問題になってきたからだと思います。
それまでは芸能人は芸能人の場所から、
主婦は主婦の場所からというように
それぞれの立場から社会現象を評価すれば
済んでいたわけですが、
現在はそれでは済まされなくなっています。
それぞれが役割を演じている閉じられた場所から、
本来的な場所を
探し求めなければならないという課題──つまり
「離脱」という課題が少なくともここ
10数年来出てきたということじゃないかと思います。
だから、「かっこよさ」には、
少なくともふたつの条件があると思います。
ひとつは、自分が役割として持っている
場所は危なっかしいものだぜ、ということを
とにかくまずわかるということです。
もうひとつは、本来的な場所を自分なりにつかむ
という課題を、自分が果たし続けることです。