鷗外と漱石

  • 時間

    83
  • 音質

    森鷗外の旧居「観潮楼」跡地にあった
    鷗外記念本郷図書館で行われた。
    音源は主催者提供。

  • 講演日:1971年10月14日
    主催:文京区立鷗外記念本郷図書館
    場所:文京区立鷗外記念本郷図書館
    収載書誌:弓立社『敗北の構造』(1972年)




当時の文学者でいえば、鷗外と漱石は、
格段に学があって、格段に見識があって、
相互に意識して、はりあっているみたいな要素が
ほのかに見えます。
たとえば鷗外の『ヰタ・セクスアリス』という小説を
読みますと、漱石の『吾輩は猫である』を読んで、
おれも書きたくなったというような個所があります。
そういう意味で、少なくとも
「おれと同じくらいな奴は、あいつだけだ」
というふうには意識していたかもしれません。
それ以外に、個人的に交渉があったとか、
親しかったとかいう痕跡はありません。
そういう意味では共通性も関係性も
それほどないといえます。
それでも、無理にあげようとすると、共通性はあります。
両者とも、当時の日本の文学の主流であった
自然主義文学に対して、何らかの意味で別の道を、
方法上でも、仲間意識でも持ちました。
それからもうひとつ、
これも大きな共通点だと思いますけれども、
鷗外も漱石も奥さんが悪妻だったということです。
そういうふうにいわれています。