実朝論

  • 時間

    299
  • 音質

    2日間に分けて開催されたため、
    途中で音質が異なっている。
    音源は主催者提供。
    吉本隆明はこの講演の2年後に
    『源実朝』を刊行している。

  • 講演日:1969年6月5日/12日
    主催:筑摩書房
    場所:新宿・紀伊國屋ホール
    収載書誌:中公文庫『語りの海2 古典とはなにか』(1995年)、弓立社『敗北の構造』(1972年)




文学にとって重要なことは、
どういう死に方をするかということだと思います。
なぜ文学にとって死に方が重要かといいますと、
死に方は、偶然には依存しないわけです。
ほとんど全面的に、作家あるいは詩人の思想、
資質そのものに依存するからです。
死に方が本質的でないと、
文学としてよみがえることができない、ということが
いえると思います。
実朝という詩人は、中世では誰もが
西行と実朝というふうに数えざるをえない、
最大の詩人のひとりです。
実朝は鎌倉幕府の創始者であった源頼朝の次男で、
12世紀末から13世紀の初めにかけて生きた人ですが、
28歳で暗殺されています。
実朝が、本質的に生きたかどうかは、
そう簡単には決められませんが、
本質的に死にえた詩人だということは確かです。