調和への告発

  • 時間

    123
  • 音質

    明治大学駿台祭での講演。
    原題は「調和への破壊」。
    客席から録音されたものだが
    比較的クリアに収録されている。
    質疑応答は途中で切れている。

  • 講演日時:1967年11月1日
    主催:明治大学
    場所:明治大学
    収載書誌:徳間書店『情況への発言』(1968年)




現在、ベトナムには戦争があり、日本には平和がある、
そういう区別の仕方があります。
しかし、ベトナムのなかには戦争もありますけれど、
同時に平和もあるのです。
人間は戦争のさなかでも極めて平和に
恋人とデートすることもできますし、
また一家団欒の食事をすることもできる、
そういうようにしか戦争というものは存在していません。
現実というものはさまざまな次元の場面を許すのです。
逆に、「日本は平和だ」といっても、
ある視点でもって眺めれば、
ちっとも平和ではないわけです。
そこには声をあげずに倒れていく人間もいますし、また、
何の声も発せずに老いさらばえて死んでいく人間もいます。
一見すると無事平穏のごとく見える
日本の国家権力のもとにおける現実のなかに、
さまざまな鋭い裂け目があり、
それをどういうふうにすくい取っていくか、
思想の問題として繰り込んでいくかということのなかに、
情況があると考えております。